【都市と郊外】郊外生活は物価が安くて暮らしやすい神話は本当か

住まい方比較
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“郊外生活は生活費が安い神話”のウソ

「マイホーム決めるなら、郊外の方が街は空いてるし生活費が安く済むからいいよね」という話を聞いたことありませんか。

本当のところどうなのでしょうか?確かに土地や物件は安いです。でも…他のコストは?利便性は?老後の生活は?気になりませんか。

都市と郊外で異なる点としては、インフラ整備の違いがあります。交通網、ガス・水道は地域差の多きものの代表といえます。

生活をしていくための居住費として、

  • 住まいにかかるコスト(家賃、住宅ローン、固定資産税 等)
  • 生活にかかるコスト(光熱水道費、自動車維持費 等)

が必要となってきます。

単純比較で考えると、都市部では家賃や土地建物価格は高いですが交通網は整備されているため、生活必需品としての車のコストは必ずしもかかりません。(趣味として車を持つことは別と考えます。)

一方の郊外では土地建物は安い分、生活必需品として車のコストが必要です。そして郊外では競争原理が働きにくいためガソリン価格を始めとした生活必需品の物価も高どまりしてしまいます。

さらに賃金相場も郊外であるほど相場が安くなるという、「逆ザヤ」現象という現実もあります。

賃金相場に生活コストが反比例する郊外生活は割に合わないのではないでしょうか。

ここではどこに住むのか、どう住むのかによって変わる居住費について、地域による変動事例を見ていきます。

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ガス料金と都市ガス普及率

都市ガスとプロパンガスの料金の違い

私は、以前プロパンガスのアパートに住んでいましたが、都市ガスのマンションに引っ越して、ガス代が大幅に安くなったという経験があります。

では、どれくらい都市ガスとプロパンガスではガス料金が変わってくるものでしょうか。

東京ガスのデータによると、都市ガスの方が全国平均で約46%割安というデータがあります。

出典:東京ガスHPより

都市ガス普及率の実態

都市ガスの方がガス料金が安いことは前項で紹介しました。

しかし都市ガスのインフラ整備が進んでいませんと都市ガスの利用はできませんし、都市ガス業者は民間業者です。インフラ整備は重要ですが、採算性がなければ事業は成立しません。

総務省統計局「社会生活統計指標 −都道府県の指標−2015」からのデータによると、全国での都市ガス普及率は、下図のように都市圏を中心に整備比率が高いのが見てとれます。

出典:総務省統計局「社会生活統計指標 −都道府県の指標−2015」より

都市ガスにデメリットはあるか

メリットの多い都市ガスですが、デメリットはないのでしょうか。

よく言われる事例としては、災害に強いのはプロパンガスと言われています。

都市ガスがマクロ単位でのインフラなのに対して、プロパンガスは個別単位のマイクロインンフラであることから、他所の影響を受けにくいというのは理解できます。

水道料金

地域による水道料金格差

水道料金についても、地域によって料金差があることが分かりました。

下記出典調べによると、大枠で見ると山あい地域では、水道管引込費用(延長)が少なくて済むこともあり、概ね水道料金は安くなる傾向と考察できます。

かといって水道管引込み延長が長く、インフラ整備費用が高額となる都市圏は水道代が高いのかというとそうでもなく、費用を負担する世帯数の多い地域では水道料金は安くなる傾向も見てとれます。

出典:都道府県別統計とランキングで見る県民性[とどラン]より

水道事業の今後における採算性

インフラ整備の採算性は都市ガスの項目でも触れましたが、地方の過疎化や人口減少が問題視される中、公共事業である水道事業も「税金」による収益が採算性として関わってきます。

説明には及ばないかもしれませんが、人口減少によって税収が不十分では、老朽化設備の更新などの必要な公共事業もままなりません。

毎日新聞デジタル(2024年5月2日)によると、2046年までに最大61%の値上げが必要な都道府県があるとの記事が発表されました。

水道料金改定(値上げ)率

出典:毎日新聞デジタル(2024年5月2日)より

県別一覧データを分かりやすく地図上に集計して見ますと、以下の通りです。

概ね都市部の地域では水道料金の値上げ率は緩やかな傾向と考えられます。やはり過疎化や人口減少の地域では、公共事業と言えども水道事業継続のためには利用料金を上げざるを得ないという実態が伺えます。

車の維持費

私の実家もそうでしたが、郊外の地域では、車の所有台数は免許の所有人数+1(農作業用軽トラ)というのが当たり前でした。そうなると重く圧し掛かるのが車の維持費。自動車税、車検費用、自動車保険(任意保険)、燃料費、メンテナンス費用と掛かってきます。郊外では敷地内に停められるケースが多いですが、場合によっては駐車場代もかかるケースもあると思います。

車の維持費にはどれくらい費用がかかるの?

車の維持費には次のようなコストがかかります。

  1. 自動車税
  2. 車検費用
  3. 自動車保険(任意保険)
  4. 燃料費
  5. 駐車場代
  6. メンテナンス費用

3~6は使い方によって変わってきますが、1,2はおおまかにみてだいたいの費用は決まってきます。

自動車税

自動車税は毎年春に納付書が送られてくるアレですが、軽自動車で10,800円、普通車で25,000~110,000円程かかります。またガソリン車では新車新規登録から13年超え、同じくディーゼル車では11年を超えた車に対しては15%割増課税(普通車)となります。軽自動車については20%の割増となります。

車検費用

車検費用には自動車重量税、自賠責保険、印紙代が含まれます。また、車検の法定費用は車種(重量)、エコカーか否か、初年度登録年月日によって金額が変わります。

そのため、かかる法定費用は所有車によった異なりますが、目安として2万円台から4万円台というのが一般的のようです。

燃料費

車の維持費において燃料費にいくらかかるかは非常に重要です。しかもそれは地域によって差があるというのが現状です。

下図では全国での地域によって燃料費の単価そのものが異なることが分かります。しかし皮肉なことに、燃料費の単価が高いのは交通の便の発達している都市部ではなく車の所有が必要不可欠な地域であることが見てとれます。

出典:経済産業省資源エネルギー庁公表した「給油所小売価格調査」より(2022年時点単価)

燃料費が高くつくのは、お財布(家計)の負担が重く大変です。

さらに重要なのは、地域によって燃料費をまかなう家計の収入相場も異なるということ。そしてそれは郊外であるほど相場が安くなるという現実です。

下図では、先に示しました燃料費の地域分布に賃金相場の分布を重ね合わせました。残念なことに「賃金相場と燃料費単価はほぼ反比例の関係」にあると見てとれます。

出典:厚生労働省 令和4年度地域別最低賃金,経済産業省資源エネルギー庁公表「給油所小売価格調査」より

 

都市部のように交通網が細かく整備されていない地域だからこそ車の所有が必要不可欠なのです。

それなのに逆に賃金相場に対する燃料費の負担割合と必要台数が多いのは、生活コストの肥大化による居住費の高騰に直結します。

車が必要不可欠な地域であるほど賃金相場は安く、逆に車の要台数が多くて燃料費も高い環境にあります。

まとめ

郊外暮らしは地価は安いとは言え生活費が安い訳ではありません。

ですが、「どこに住む・どう住む」ということに正解はありません。

その地域に生活するという人の価値観をそれぞれ同じ100とした時に、利便性にかける”住まいコスト”と、不便性を補う”生活コスト”またはリスクの配分割合(%)をどのように捉えるか、という配分の違いだと思います。

郊外に住むということは、利便性にかける”住まいコスト”不便性を補う”生活コストまたはリスク、という価値観があれば良いと思います。
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