「狭すぎてどうにもならないよ」リフォーム工事の現地確認で下見した時にありがちなお話です。
家を探す時って、とかく直接触れる居住空間である内装に目が行きがちですよね。
でも、その居住空間を守る外装と外壁を守る風通し、そしてその外装をメンテナンスするための外周りの敷地のこと、考えてみたことはありますか。人やトラックが入れない場所でどうやってメンテナンス(リフォーム工事)をしますか。
新築の計画段階であれば計画を見直すことで敷地を確保し、いずれ訪れるリフォーム工事の苦労を回避することができます。建売住宅や中古物件でも、「お互い様」という近隣との良好な人間関係を築くことで、作業空間は確保することができます。
それでもトラックが入れる経路や駐車スペースがなければリフォーム工事はできません。
そこまで含めて外周りのメンテナンス環境は「維持管理費」として家主に返ってきます。
この記事はこんな人におすすめです。
ここでは外装のメンテナンスにおける、反面教師としての現場事例を交えてご紹介したいと思います。
敷地めいっぱいに建てられた建物の残念な行く末
ひとつお伺いしますが、敷地めいっぱいに建築面積ぎりぎりまでに建てられた住宅はお得でしょうか。
都市部のお宅では特に、隣のお宅に窓越しに手が届きそうなくらい近接して、敷地めいっぱいに建てられている光景を目にします。
新築の時には外構ができていないので、まだ敷地に余裕はあります。しかしフェンスやブロック等の外構が完成した後は人が立ち入れない状態となります。人も入れないほどの隙間で建物のお手入れはしたことはありますか。
修繕工事までの数年または十数年、人の目に触れることのない部分もあるでしょう。風通しが悪く湿気のこもった状態では建物は確実に劣化しやすくなります。
もちろん、人の入れない空間では足場も建てられません。いざ改修工事に取り掛かろうという頃、足場やさんプロだからどうにかしてくれるだろう、という目線で話されます。しかし、足場屋さんも人が立ち入れない状態ではやりようがありません。
ところで、次のような狭小敷地での改修工事ではどのように足場を組み、建物のメンテナンス工事をしたら良いでしょうか。外周りの敷地を確保する重要性、見えてきませんか。
敷地目一杯に家を新築したある現場の惨事
あるお施主さんの自宅新築現場でのことです。現場のお隣さん宅はちょうどリフォームの最中で、足場が架かっていました。ちょうどそのお隣さん宅の足場は、自宅敷地内に収まってはいるもののなかなかの敷地目一杯ぶりです。
それを良いことに、そのお施主さん宅は新築の足場をお隣さん宅との共用足場として借りることにしたそうです。
お隣さんとしては当然ながら面白くありません。
「敷地は広く、ゆとりを持って建物を建てられるのに何で敷地目一杯に建てるのか?(寄せるのか?)改修工事の時にどうするのか?」考えればすぐ分かると思います。
しかも新築するお施主さん宅の家は庇が付くとのこと。敷地ギリギリに建てるお施主さん宅の庇からは、雨水等が確実にお隣さん宅に落ちてきます。なおさらお隣さんとしては面白くありません。
お隣さん宅の面白く思わないポイント
- 改修工事を考えない敷地計画
-
お隣さんに配慮のない庇の設置
新築当初からそんなトラブルでお隣さんとの関係は良いわけありません。新築するお施主さん宅の改修工事の時は絶対に敷地は貸さないと思っていたそうです。
十数年後そんなタイミングは訪れました。我々はそのタイミングに立ち合うことになりました。良い顔をしないお隣さんにご挨拶をすると「ほらみたことか!」渋い交渉が始まりました。
結果、元請けの工事会社の熱い交渉の末、敷地はお借りするとことはできました。ですが、ギクシャクした近隣関係の中で工事をする事となり、足場請け負いの我々もとても気まずい工事となりました。
狭小地に建てられた建物のその後の苦労
街を歩いていると、売りに出されたかつての一区分地が、二区画・三区画と区分されて売りに出されている様子を見かけますよね。
かつての一軒分の土地に2棟・3棟と建てるわけですから、当然ながら家どうしの間隔は狭くなります。狭い敷地での新築分譲の足場はどう建てていると思いますか。
新築時は2軒・3軒と同時着工で住人も住んでいないので、いか様にも足場を架けることができます。それに加えて外構がまだ出来ていないので敷地には余裕があります。
しかし修繕工事の時期は居住者同志の考え方や経済事情が異なりますので、一緒に工事をするとは限りません。
そうすると、どのような状況での工事となるかは想像に難くないと思いますが、片方の住宅だけ工事するのは狭小地での難工事となります。フェンスなどの外構も出来ているので、足場はお隣の敷地を借りなければいけないケースは多々あります。
お隣同士が仲が良くて「お互い様」という気持ちを双方持ち合わせていれば良いのですが、都市部によくありがちな希薄な近隣関係ではいがみ合う場合もあるかも知れません。
そのような環境下でのリフォーム工事で敷地から絶対に越境しないで工事してほしいという要望は、非常に難題な工事となります。
大通り沿いと路地裏の土地には要注意!
町を歩いていると大通り沿いから裏路地まで、分譲地の区画工事をしている光景は見かけると思います。セールス側は売るためには、不都合な情報は積極的には話してくれません。数年後のリフォームの頃に判ることもあるかと思います。
宅地環境や敷地環境によって、工事の難易度は変わってきますが、ここでは端的な例として、大通り沿いの宅地と路地裏の宅地の例についてお伝えしたいと思います。
大通り沿いの建築
大通り沿いというのは防犯上やバス停へのアクセスなど便は良さそうですよね。でも、大通り沿いで工事をするということは、工事車両を止める場所が最大の難点となります。
大通りにトラックなどの工事車両を止めるということは、交通誘導のガードマン手配、道路への駐車許可のための警察への道路使用許可が必要となります。
これらの工事の環境作りのためにかかる費用は、通常のリフォーム工事には含まれていません。ということは、リフォーム工事本体以外のところで割増費用が発生するという要素になります。
さらに、敷地内に足場が収まらなければ、道路に足場をはみ出して建てるための役所への道路占用許可も必要となります。
警察も役所も申請手続きと道路の使用費用が必要なので、その手間代と経費が発生してきます。これは、前項でもお伝えしました敷地ギリギリでの建築でなければ、不要な部分と言えます。
そもそも工事業者が大変なことは日常生活でも大変なこと。大通り沿いでの日常的な車の出し入れは大変ではないでしょうか。
路地裏建築
大通り沿いと全く逆のパターンです。当たり前ですが、路地裏にたたずむ住宅もリフォーム工事の時期は訪れます。
路地裏住宅のリフォーム工事に潜む業者泣かせというと、通常のトラックが入れない、という事態はあるあるです。
そのような場合には小型のトラックで現場入りし、遠方の駐車スペースに止めてド運搬するしかありません。駐車スペースから施工場所までの小運搬費用も別途頂くようになります。
また小型のトラックは所定の積載量が少ないので、必要な材料があまり積めません。資材搬入の効率が悪いということは、必然的に施工の効率が落ち所要日数が長く必要になります。
結果どうなるかというと、工期が長くなりますので、施工日数×職人単価=工事費が割増しとなります。