【狭小3階建て住宅】工事業者だから知る安易に買ってはいけない理由

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【狭小3階建て住宅】工事業者だから知る安易に買ってはいけない理由
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狭小3階建て住宅のメリットは有効期限いつまで?

「やっと叶ったね!念願のマイホーム。」と気持ちウキウキになることも最初のうち。いずれ後悔の念が訪れるであろう建物形式があります。

それは狭小地に無理矢理計画された3階建ての戸建て住宅がそれにあたります。

新築時点では外構と言われるフェンス・策・ブロック等の工作物がまだ出来ていないので、敷地目一杯に足場設置をすることができます。しかし住み始めると外構が出来る他に隣家との人間関係も関わってきます。

私は仮設工事の仕事をしながら、新築で外構ができていない時だから建てられるけど、十数年後改修工事が必要な時にはどうするんだろう?という無計画な住宅を多数見てきました。

分譲販売の会社は売ることが目的なので、売ってしまえばそれまでですが、実際に住む人はそこに住んでいる限り住環境に付き合うことになります。現実に狭小3階建て住宅の改修工事では後悔の声も耳にしています。

ここでは戸建て購入で後悔しないためのポイントを、工事業者から見た目線でご紹介していきます。

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なぜ狭小地に住宅を建てる必要があるのか

住宅市場を取り巻く環境の中では、庭付き志望や隣家との距離感、マンションの高騰などの理由により、戸建て志向の割合が一定数はいるのが現実です。

相続などの関係によって売りに出された、かつての一軒分の敷地を分筆して、3階建ての建売住宅が建築されるのは昨今の流行りであるかと思います。

あえて三階建てにするにはそれなりの理由がある

家を探すのに便利なのは通勤に便利な駅から近い場所(いわゆる駅チカ)ですが、そのような一等地にはオフィスビルやマンションが立ち並んだり既に昔からの住宅があったりします。

そのため、戸建て住宅を建てる土地を探すのには駅から離れる傾向にあります。駅の近くにあったとしても土地単価が高いなど、戸建て住宅の家探しには立地の問題があります。

そこで注目されるのがかつての一軒分の敷地を分筆して狭小区分された駅チカの土地という訳です。これであれば土地代を安く抑えることができ、土地が狭くても通勤の都合などで駅チカ希望といったニーズに応えることができます。

ただし狭小土地であるが故に、建物を建てるには上に延ばして床面積を増やす必要があります。

3階建てとすることで、狭い土地を有効に床面積を増やすことができます。

一般的な2階建て分の間取りは3階建てにしないと必要な部屋数や機能を確保できないという状況が発生します。

同じ部屋数や機能を備えた住宅でも、2階建てと狭小3階建てでは、土地を削減した分のシワ寄せは何処かに必ずあると考える必要もあります。

間取りを考える注意点

いざ駅チカ狭小地で家探しをしようをする場合、狭い土地でも快適な居住空間を実現しようと、注文住宅で好みの間取にしたくなると思います。

好みの使い勝手の間取りにすることで、生活ストレスは軽減して家(土地)の狭さはさほど気にはならなくなるかも知れません。とても良いことに思います。

ただし敢えて言わせて頂くなら、「そこに住んでいる間は」と。

なぜでしょうか。

定年を迎えた老後、駅チカに住む必要性がなくなった後も住み続けますか?老後も3階までの昇り降りを日々するのですか?子供が巣立った後もその部屋数は必要ですか?

駅近3階建て住宅は老後の住まいに適しているとは思えません。

期間限定で考えるならば、住み替えのことを視野にいれた家探しは当然必要になります。

注文住宅は万人受けしません。むしろ売りづらいといったデメリットがありますので、シンプルな間取りの建売住宅の方が向いていると考えられます。

駅チカ狭小地に家探しをするならば、そこに住むメリットの有効期限までも考えての家探しが大切になります。

住まい方の現実

家は日常的な生活を送る場所ですが、そんな毎日の生活の中でも長きにわたる日常生活では窮屈に感じられる点は存在し得ます。

縦動線の生活を推奨しない理由

狭小敷地での住宅は空間を有効に利用する必要があるため、必然的に縦にレイアウトされた間取りとなります。その結果、日常生活で縦移動の動線が多くなる生活スタイルとなりますが、老後の暮らし方は大丈夫でしょうか。

現時点での答えは「?」かと思いますが、かなり「NO」に近いと考えられます。

理由としては

  • 二階家に比べて建物の維持管理費用がグッと割高になる
  • 居住スペースを広く取ろうとすると階段が急こう配になり、老後の転倒危険が高い
  • 昇降スペースが狭いため家具家電の運び入れが高額になる可能性が高い
  • ホームエレベーター設置は安くない設置費用とランニングコストが必要
  • 狭小住宅ではリビングが上階に配置されやすく※1荷物等の荷揚げが大変

といった割高な運用管理コストや老後生活に関する不安要素があげられます。

※1:耐震設計において下階にはトイレ・洗面等で壁を多く配置する必要があり、大空間のLDK(リビングダイニングキッチン)は上階に配置されがちです。

しかしそもそも、敷地が狭いために3階建てとしているのに、階段の他にホームエレベーターで昇降スペースを取られてしまうことは、狭い居住空間を更に狭めてしまうことになり本末転倒ではないでしょうか。

狭小3階建て住宅では2階建て住宅と同じ様には行かない部分が多々ある、ということを前提に家探しをしないと、失敗物件を掴んでしまうことになります。

間取りの不自由はないか

建築設計的な観点からも耐震性の理由により、間取りの自由度は二階家よりは低いかと思います。

重心位置による揺れ方の違い

図は2階建てでの説明のものですが、物理的な現象として重心は上階にあると、下階の負担は大きくなります。そのため1階は耐震強度の関係から壁を多く配置する必要があます。これは3階建てではより重要なものとなります。

そのため、トイレや洗面・浴室などの小部屋を多く配置することが望ましく、寝室やリビング・ダイニングといった大空間スペースは配置しにくいという事情があります。

分かりやすい事例として、屋根材として重さのある瓦よりも金属屋根等の比較的軽量な屋根材が耐震上好ましいとされるのはこの理由のためです。

耐震設計において狭小3階建ての建物では特に上階は軽くする必要があるため、間取り設計の自由度は少なくなる可能性があります。

コストが掛かる空調管理

物理的な現象として「暖かい空気は上へ冷えた空気は下へ」行くということは周知の事かと思います。2階建てでもそうですが、3階建てとなると更に顕著になります。

そのため、各階からの空気の流れを閉じ込めて階ごとにエアコンでの空調管理が必要になります。もしくは全館空調のシステムを導入した住宅設計をしていくことで、1階から3階までオーブンな空間でも快適に過ごせるようになります。

ただしいずれの方法にしても、設備費用(イニシャルコスト)と電気代・メンテナンスコストが掛かってきますので、空調管理には相応のコストが掛かるということは間違いありません。

老後の生活では日常生活の温度差がより身に染みると言います。歳を重ねた時に空調管理費は重要な生活コストになると考えられます。

フロアごと温度差の大きい3階建て住宅での空調管理にはエアコン設備等のイニシャルコストと電気代やメンテナンスなどのランニングコストは重要な生活コストになります。

狭小3階建て住宅に住んだ実例

新築で極度の狭小地の新築足場を弊社で請負い、十数年後の改修工事も請負うことになりました。新築時は外構がなかったので良かったのですが、改修時は大変な状態になりました。

まず隣地にも家が建ち、フェンスなどの外構もできて、細身の人限定でないと人が入れません。足場工事作業中もヘルメットを被った状態で後ろを振り返ることもできません。

工事作業者の安全を担保できない敷地条件、そのような建物あり得るでしょうか?

そんな状態の家なので、足場も架かるようにしか架かりません、と元請け建設会社さんに了解を得ることで工事を請けました。

「なるようにしかならない」と言うことは必ずしも作業性の良い足場にはできない可能性がある、と言うことです。なので外装工事も作業性が良いとは限らないし、工期も長くなるということです。

すなわち手間数が掛かるので、割増単価と人工数が掛かると言うことです。

お施主さんのお話では、こんな狭い家(土地)買って失敗したとの談だったようです。さらに3階は今は使っていないので、無理に3階建てにする必要はなかったと感想を漏らしていたそうです。

狭小地3階住宅の弊害

住んでいても日常的に上記のようなデメリットは付きまといますが、長期的に見た場合でも不安要素に感じられる点は考えられます。

リフォームやメンテナンス費用が割高になる

2階建てと3階建て住宅では当然ながら高さが大きく変わってきますが、この高さの違いは様々な部分で影響をもたらします。

弊社でもリフォームや改修工事の足場工事は請負いますが、3階建てとなると人数を増員して工事を行なう必要があるため、必然的に3階建ては足場工事など高層割増となることが多くあります。

しかも狭小3階建て住宅では土地代を減らしてその分建物に費用を充てる意味合いで3階とすることが多いでしょうから、土地が狭く隣家が接していて工事がしにくい状況はよくあります。

足場資材の搬入搬出も相応の手間が掛かるため、必然的に工事費用にも跳ね返ってきてしまいます。

その他メンテナンス作業などにおいても3階まではハシゴが届かないため、足場設置が必要になるケースもあります。足場を設置するということは、職人が伺うためその労務経費が別途必要となり、時にはメンテナンス作業費用よりも足場工事代の方が高くなるということも実際に起こり得ます。

中古で買ってもリフォームやメンテナンス費用が高くつくのであれば、もっと状態の良い物件を探す事も選択肢として大切かと思います。

【あわせて読みたい関連記事】リフォーム工事の盲点|知らないと後悔する!専門業者が徹底解説

狭小地に建てられた建物のその後の苦労

耐震性(揺れやすい)

先述においても3階建て住宅では揺れに対する大きな抵抗力が必要となりますが、かつての1軒分の敷地を分筆して複数の住宅を建てる場合、新築する建物形状は細長い形状となることがよくあります。

分筆した敷地の例

この場合、長辺に対して短辺が極端に短い細長い形状では地震横揺れに対して、短辺方向では抵抗係数が弱くなってしまいます。

方向による揺れ方の違い

その地震抵抗力の補強には耐力壁を増やすなどで対応は可能でしょうが、それでも揺れの大きさを抑えることは難しいので、狭小3階建て住宅では地震の揺れ方は大きい場合(方向)があると認識する必要はあります。

そのため、室内での家具転倒防止対策も揺れの大きい方を重点的に行うなどの対策をお勧めします。

狭小3階建て住宅に住む場合には、家具等の転倒防止対策は短辺方向を重点的に行う必要があります。

複合構造の住宅

建物の用途によっては1階周りと上階で異なる構造としている建物があります。

例えば1階を駐車場とするためにスパンを飛ばせる鉄骨造として2階3階を木造にした場合、地震の時に構造材による揺れ方の性質が異なるので、鉄骨造と木造の接合部分に負荷が掛かりやすくなります。

このような構造の建物は単一の構造材よりも地震による影響を大きく受けますので、改修工事やリフォーム時の工事費用は予想外に掛かってしまうなんてこともあると思います。

高さのある建物では特にシンプルな構造の物件探しをしていくことをお勧めします。

どうしても3階建て住宅を必要とするならば

通勤の都合などで、どうしても駅近での戸建て住宅を検討したい場合もあるかと思います。

駅近ですと狭小3階建て住宅となる可能性も高いと思います。その場合でもシンプルな間取りの建売住宅を検討していくと、歳を重ねて通勤の都合という前提条件が無くなった時に選択肢の幅は広く持てるかと思います。

狭小3階建て住宅を選択する場合、老後の住まいまでは考えず、いずれ売却することも視野に入れた家探しとした方が安心な住まい方をできるかと思います。

 

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