「家に帰ってくるとホッとするね。」マンションに引越してから、特に夏場の外出後に感じることですが、玄関に入ってひんやりと感じると幸せを感じます。
これはコンクリートの性質が良い面に表れているためで、鉄筋コンクリート造の建物ならではの現象と言えます。
一般的な建物構造で考えていくと、戸建てやアパートは木造、マンションは鉄筋コンクリート造が割合として多くあります。最近の木造戸建て住宅(特に注文住宅)では、気密性が高いなどコンクリート造にも似た住み心地を持ち合わせる建物も増えているかと思います。
しかし木造とコンクリート造では根本的な材質が違います。住まいの素材として用いる場合、どちらが快適に住まえるのでしょうか。
コンクリート造では良くも悪くも性質が両極端に表れるものと考えています。
ここではその理由を実例を交えてご紹介します。端的な一例として木造のアパートと鉄筋コンクリート造のマンションを主な比較としてそれぞれの特性を見ていきたいと思います。
遮音と防音性能
音の伝達特性
まず材質の特性として、鉄筋コンクリートは施工の際に鉄筋同士の間に空気の隙間ができてはいけないので、水のように密度が高いという特性があります。一方、木材は素材そのものの細胞の隙間に水分を吸収するための空気の隙間があります。そして木造住宅の壁内部は断熱のための空気の塊(断熱材)で充填されています。
そして音は物体を媒体として伝わりますが、密度の高い物体を媒体として伝搬するのが固体伝搬音、空気を媒体として伝搬するのが空気音とされています。
騒音は意外な所から
水は音を伝えやすいという特性は広く知られているかと思います。これは密度が高いことによりますので、コンクリートも同じ性質を持っています。
メカニズムはこうです。コンクリートは遮音性が高いので直接の音の透過はあまりありません。しかし、密度が高い材質は固体伝搬音※として音を遠くまで伝える特性があります。そのため床越しに音が聞こえる訳ではなく、鉄筋コンクリートの躯体を伝って伝搬し、壁紙一枚のコンクリート部分(天井)から響いて来たのです。おそらく我が家だけでなく、他のお宅でも同様に歌声が響いていたことと思います。
※床の衝撃音など、固体が媒質(橋渡し)となって伝えられた音のこと
次項で木造建物の特性をご紹介しますが、これが木造の建物であったら、床から直接歌声が響いていたことと思います。
木造の壁は空気の塊
木造の特性として、木材や断熱材に空気の隙間があることは先にご紹介しました。これが音の伝搬に深く関係してきます。
材料の中に存在している空気は、音を伝搬する媒質としての役割を果たします。
振動された空気は、材料内の空気を媒質として、音を伝搬させるわけです。これは空気音と言われ、低音の方が周波数の関係で壁を透過しやすくなります。
省エネで快適な生活に必要なこと
エアコン効率の問題
私は以前、戸建てではないですが木造アパートの2階に住んでいた頃、冬は寒くて息が白くなり夏は部屋が灼熱地獄という生活でした。
断熱が全然効いておらず、まさに室内も外気温そのものです。もちろんエアコンをつけていてもです。
それはコンクリートの性質が関係していることによりますが、コンクリートは木材に比べて熱容量(容積比熱)が3~4倍あることによります。すなわちコンクリートは木材にくらべて3~4倍熱しにくく冷めにくいということになります。
天井の高い家に潜む落とし穴
天井の高い家というのは開放感があり実にのびやかな感じがします。しのぎやすい気候であれば。
私が以前住んでいたアパートではロフトが付いていたので、天井が高く開放感があり入居当初(春)は気持ちよく暮らしていました。中2階のロフトは隠れ家のようでワクワクし、ドラえもんのような感覚で、ロフトに布団をしいて寝ていたこともありました。
しかし、結論です。
天井の高い家の上の空間は、夏暑くて居住空間としては適しません。
エアコンの効きが良くない天井高の高い家で暮らすには、何かしらの処置が必要となってきます。
また、天井高の高い家ではエアコンも高い位置に設置されるため、フィルター掃除などメンテナンスも通常よりも高い位置で作業をしないとなりません。業者の人たちはそれなりの脚立など用意がありますが、我々一般住人は高所作業の設備はなかなかそろっていません。
電球交換なども含めて高所での作業が時おり必要であることも、最初に認識しなければなりません。
耐震性
地震に対しての抵抗力の違い
最近では木造住宅でも耐震等級の高い住宅も造られています。木材はしなやかで曲げの力にも強く、何と言っても軽いという特性があります。そして大抵の場合は低層の構造物であるため、振動による揺れ幅は小さくて済みます。そのため木造住宅は地震のエネルギーを木材のしなりによって吸収することができます。
つまり木造住宅では地震の揺れを「軟」の力で受け流す特性があります。
一方、鉄筋コンクリート造の建物は木造と比較にならない程の重量物です。そして木造よりも高層建物であることが多く、上階になるほど揺れ幅は大きくなります。高層のもので重量物が揺らされると上の方ほど、揺れによって振り回される力が大きくなることはイメージしやすいと思います。
そのため鉄筋コンクリート造では『揺らさない』ということが被害を少なくするために必要になります。そこで先に紹介しました鉄筋コンクリート造の特長が生きてきます。
鉄筋コンクリート造では、伸び(引張)と縮み(圧縮)を繰返す振動に対して、鉄筋とコンクリートがそれぞれの得意分野で耐えしのぐことで耐震性が保たれている、という構造特性になります。
つまり鉄筋コンクリート造の建物は「剛」の力で耐えしのぎます。
地震の揺れ方の違い
地震に対して対処する構造の違いは前項でご紹介しました。しかし実際の地震は、地震の強さや揺れの周期(振動数)は震源の深さや震源地からの距離などにより変わって来ます。
建物はある一定の振動数で極端に大きく揺れてしまうことは、一般にあまり知られていないかと思います。
共振現象と呼んでいますが、身近な例で挙げると、長い棒を小刻みに揺らしてみても大して揺れないですが、振れ幅を大きく揺らすと揺れが拡大してしまします。逆に短い棒を小刻みに揺らすと激しい揺れに変貌してしまいます。
つまり地震による振動周期が建物の揺れやすい振動周期と一致してしまうと、共振現象によって揺れが極端に拡大してしまいます。